途中で努力を止めない


学問でも芸術でも事業でも、「これで終わり」という地点はどこにもなく、いずれも無限に進歩していく可能性を秘めています。私たちの人生も同じではないでしょうか。
ところが何か志を抱いて、ある程度のところまではたいへん努力をしたけれども、途中で努力を止めてしまい、志を遂げずに人生を終えてしまう人も少なくないようです。
例えば、誠実な努力の末に事業をある程度大きくした経営者が、 後半生に至るとその精神が徐々にゆるんで、勝手気ままで不摂生な生活を送るようになる場合もあるでしょう。その結果、家族や周囲からうとまれたり、自分自身の健康を害したりするのです。どれほどの社会的地位や名誉、財産を得たとしても、これで幸福な人生と いえるでしょうか。
中国の古典『詩経』に次の言葉があります。
「初め有らざる靡し、克く終わり有ること鮮し」
最初のうちは誰もが努力しようとするが、最後まで努力を続けてやり遂げる人は少ないという意味です。
何事も努力を途中で止めることなく、一歩ずつ着実に歩んでいきたいものです。一生涯学ぶことを止めず、品性の完成に向けて精進し続けてこそ、心豊かな人生を全うすることができるのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選