困難は有益な機会ととらえる


忍耐し、己に打ち勝ち(克己)、辛いことにも負けず、また何事にも熱心に取り組む姿勢は大切です。しかしその中身は、心の内に利己心が存在するかどうかで大きく違ってきます。

利己心がある状態で、何かを我慢したり、己に勝とうと努力したり、何かに熱心に取り組んだりする場合、その心理状態は決して理想的ではありません。表向きは一所懸命にやっていても、心の中では利己心に基づく怒りや恨み、憎しみ、悲しみ、苦しみを抱えていることが多いからです。

それらの感情を無理やり抑えつけていると、ストレス過多の状態に陥り、精神的にも肉体的にも疲弊してしまう危険性があります。知らず知らずのうちに、嫌な気持ちが顔ににじみ出て、周囲にも不快な思いをさせているかもしれません。

利己心を克服した状態であれば、何か困難な出来事に直面して忍耐が必要なときも、その捉え方が違ってきます。困難は怒りや憎しみの対象ではなく、天から与えられた試練であり、自分を成長させてもらえる有益な機会であるというふうに受け取れるのです。こうして感謝の心を持って試練を受け止めることができれば、それが精神的・肉体的ストレスになることはないでしょう。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選