おでんの香り


毎年秋になり、コンビニに入り、おでんの香りがすると、10年前に他界した母のことを思い出す。

母は父が亡くなった後、2人暮らしに。私の家とはスープの冷めない距離だったので、毎朝と帰宅後、仕事の疲れもあるが、顔を出しに行った。冬の朝は、毎日近くのコンビニで、母の好きなおでんを買って届けたので、今もコンビニでおでんの香りがし出すと母の顔が浮かぶ。

そんな在宅介護も限界にきて、母を施設に入れたが、入所する朝に、なごりおしそうに自宅を見ていた姿が忘れられない。母が施設で亡くなる前の夜面会に行った時、しぼり出す声で「本当にあんたには世話になったね」の言葉が今も胸に残る。

母が暮らした家は、今は駐車場になっているが、冬の朝に通ると、おでんの香りがして、母の笑顔思い出す。

 


(京都府・H.I/男性)