個人と団体の調和を図る。


人間は一人ひとり個性を持っています。基本的人権について論じるまでもなく、人間は自由に生きる権利を有しており、一人ひとりの個性は尊重されなければなりません。
その一方で、私たちは家族や学校、企業、国家など、何らかの集団に属しています。集団に所属している限り、その集団の維持・発展のために努力していくことが必要です。所属団体が健全な状態で運営されていなければ、私たちは幸福で平和な社会生活を送ることができなくなってしまいます。団体と個人とのどちらを優先しても、いろいろな問題が発生します。個人の都合や利益ばかり重視して、一人ひとりが勝手に行動したら、団体は発展できないどころか、いずれ立ち行かなくなってしまうでしょう。かといって、団体の発展を優先するあまり、個人の存在を軽視して犠牲を強いるのも、許されることではありません。会社さえ発展すればよいとばかりに、安い賃金で重労働を強いる悪質な企業が世の中にはたくさんあります。
理想的なのは、やはりその団体が「道徳」を基準として運営され ることです。そして個人を十分に尊重しながら、団体の運営も軽んじることなく、双方が調和した状態を目指すのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選