おばあちゃん通信


実家の兄から「母の面倒をみてくれないか」と突然電話があった。義姉も亡くなり兄が母の介護をするのは大変だろうと思っていたが困惑した。
折しも自宅の建て替えのため設計が終わって着工の矢先であったため「ちょっと考えさせて」と言って返事を保留した。妻にこのことを話すと二つ返事で「面倒をみてあげましょうよ」と言ってくれた。
この一言で母の介護を引き受ける決心をした。工事の着工を一時中断して急きょバリアフリー仕様に設計変更をおこなった。
介護保険制度を勉強し、介護施設を数か所見学してケアワーカーに訪問医の紹介をしていただき受け入れの準備を進めた。母は認知症の症状があり私たち息子夫婦が誰かわからない状態で、不安を抱えながら妻と二人で「介護」という人生初の体験をすることとなった。
介護で大切なことは抱え込まないことと聞いていたので、できるだけ定期的に母の状況を兄弟や親戚に知らせる方法として、「おばあちゃん通信」と名付けた新聞を毎月発行し送ることにした。
妻は献身的に母の介護をしてくれたが骨折や肺炎が重なり一年余りで亡くなった。
新聞は13号で終了したが新聞で知らせることによって兄弟、親戚との絆が生まれ精神的に大きな支えとなった。
介護は辛いことばかりと思っていたが介護を通して母から大切なものを授かったような気がする


(埼玉県・S.M/70代・男性)