小さな事変を見逃さない


大きな災いを未然に防ぐことができれば、人は深刻な不幸に陥ることなく、幸せに生きていけるでしょう。大きな災いを防ぐためには、日常生活の中で発生する「小さな事変」を見逃さないようにすることが大切です。「中国の古典『易経』には、「臣下が君主を殺したり、子供が親を殺すような事件は、決して突発的には起こらない。それまでに小さな不満がたまり、意見の対立が繰り返されたことによって起こる」という意味の記述があります。大きな災いが起こる前には、小さな出来事がいくつも積み重なっているものなのです。
例えば青少年が非行に走る前兆として、子供の態度が反抗的になったり、ふさぎこんだり、夜更かしが増えたり、無断で外泊するといったことが挙げられます。これを放置したり、そのときどきで子供の心をうまくケアできなかったりすると、ゆくゆくは大きな問題に発展する危険性があるのではないでしょうか。
あるいは仕事の中で、小さなミスや小さな問題が発生したとき、その場しのぎの対応だけで根本的な解決や反省をしなかったら、やがて大きな失敗や損失を招いてしまいます。
大事の前には必ず小事があることを忘れてはいけません。一つひとつを戒めの機会とし、早い段階での問題解決が肝要です。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選