積善の家には必ず余慶あり


私たちの日々の心づかいと行いの結果は、必ずしもすぐに表れるわけではありません。誠実に生きることを心がけていても、容易に解決できない問題に直面し、どうすればよいのかわからなくなってしまうこともあります。自分がよいと思っていることをしていても、周囲から誤解や批判を受けてしまうこともあります。そんなふうに苦しいとき、私たちはどういう心構えで乗り越えていけばよいのでしょうか。

中国の古典『易経』には、次のような言葉があります。

「積善の家には必ず余慶あり」

善行を積み重ねてきた人の家には、必ず思いもかけない幸せが舞い込んでくるものである、という意味です。どんなに小さな心づかいや行いであっても、その累積の結果は必ず表れるものであり、またその恩恵は、その人の子孫にも及ぶといわれています。

もちろん「余慶」を期待して善行に努めるのではありません。しかし、直ちに報われなくても、「お天道様は必ず見てくださっている」という強い信念を持つことが大切です。その信念があれば、私たちは「安心立命」の境地に至ることができます。天を信じることで、心を安らかな状態に保ちながら、小事に動じることなく生きていけるのです。


出典:「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え105選