亡き母へ


私の結婚式
慣れないところで、迷惑をかけるから、
留守番を買って出た。目の不自由になった
母ちゃん
誰も反対しなかった、でも、壇上で手を引いて、
母ちゃんに花束をあげるべきだった。
結婚式に出会うたび今にして思うのです。
母ちゃんごめんね。
島倉千代子が歌う、
「東京だよ、おっかさん」
あの歌を聴くと泣けちゃうんだよ。
母ちゃんは、東京で新婚生活、
大震災で、田舎へ戻ったとのこと。
学生時代東京で過ごしたのに、
自分のことで精一杯、
呼ぶこともしなかった。
その後もずっと、ずっとしなかった。
あーちゃんごめんね。
母ちゃん亡くなってから、
母ちゃんのタンス開けました。
就職して職員旅行で、人真似して、
買った浴衣の帯と下駄、
タンスの中で、風呂敷に包んであった。

同居していた子が顔を出し
「下ろせば」といっても大切にしまっておいたんだわ
泣きじゃくった私を、姉が抱いた。


(栃木県・N.Y/70代・女性)