物の「いのち」を生かしきる


「もったいない(勿体無い)」という言葉は、『広辞苑』(岩波書店)では「物の本体を失する意」とされ、その物の持ち味や存在の意義を十分に生かすことができなくて申し訳ないという意味だと考えられます。まだ使えるのに捨てられてしまうことを残念に思う気持ち、物の「いのち」を全うさせられないことを悔やむ気持ちです。

日本人は、物も「いのち」を持った存在として見てきました。針供養や筆供養のように、役目を果たした道具を供養するという習慣も残っています。使われなくなった物をただ捨てるのではなく、感謝の気持ちで供養することを通じて、物を大切にする心が受け継がれてきたのです。

物の「いのち」に感謝し、物本来の持ち味を最後まで十分に生かしきるように努める「もったいない」の心を、今、あらためて見直してみませんか。

(四〇八号)


出典:ニューモラル-心を育てる言葉366日