モラル
なぜ道徳を伝達するのか
道徳的な生き方を知り、学び、実践によって徳を積み、自ら成長 を感じられるようになると、自分の中で変化が起こります。人を思いやる気持ちが強くなり、自分が身につけつつある道徳的な生き方を他人にも伝えたいという願いが湧いてくるのです。
人を助けたいという気持ち自体、精神が成長していることを表し ています。品性が向上したからこそ、自分以外の人間の役に立ちたいと思えるのです。また、人に伝える行為を通して道徳への理解がさらに深まり、いっそう成長していくことができます。
ここで気をつけなければいけないことがあります。道徳的な生き方を他人に伝えていくうちに、「自分は素晴らしい道徳を知っている。だからこれを人に教えてあげて、その人を幸せにしてあげるんだ」といった高慢な心境に陥る可能性があります。「自分は人よりも道徳のことをよく知っている」と意識することで、偉くなったよ うに感じるのでしょう。
しかし道徳を人に伝えるのは、人を幸福にしてあげることではありません。道徳を伝えるという道徳的行為を通して、自分自身の品性が向上し幸福が増していくのです。相手の幸福は、相手自身が道 徳的に生きることによって生み出されます。そう考えれば、道徳を 人に伝える際にも、謙虚な気持ちになれるのではないでしょうか。
出典:「三方よし」の人間学–廣池千九郎の教え105選