思い出話でもしましょう。


一人暮らしをしていた父の世話では、大変苦労を掛けたね。
連れ合いを早くなくした父は、一人娘の君に頼りきりだった。
長男の僕も安心していた。
しかし、九十歳を過ぎたころから軽い認知症が出て、昼夜問わず君を呼び出していたことには、当分気づかなかった。
家庭生活と父の世話の板挟みになり、メンタルの薬を飲んでいるとは思わなかった。
ケアマネージャーさんの計らいで僕の近くの施設に入れた時は、一安心した。
君の顔にも、明るさが戻ってきた。
父の施設での生活を心配していたが、しばらくするとすっかり馴染んできたね。
その父も旅立ってもうすぐ二年、三回忌をします。
頑固親父の思い出話でもしましょう。


(山口県・K.T/60代・男性)