人はなぜこれほど笑いに魅かれるのか


日本では昔から「笑う門には福来る」といいます。

ニコニコしていると幸せや富が転がり込んでくることを人々は体験的に知っていたのでしょう。「人生は泣き笑いだ」という人もいますが、どちらを好んで引き寄せるべきかといえば、当然、笑いのほうでしょう。その真実ゆえに世界中にも笑いの素晴らしさを表している哲学者や詩人の言葉はたくさんあります。いくつかをしっかり見てみましょう。

「世の中には腹が立つことがたくさんあるさ。流れの中には濁った部分もある。だから、そんなことにかかずらうことなく、いっそのこと笑い飛ばしてしまいなさい」

『俗人への手紙』ヘルマン・ヘッセ(独)

「人は幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ」

『幸福論』アラン(哲学者・仏)

「できるだけ幸福に生きよう。そのためにも、とりあえず今は楽しもう。素直に笑い、この瞬間を全身で楽しんでおこう」

『悦ばしき知識』ニーチェ(独)

「笑いは脳をマッサージする。笑いは緊張状態を緩和する。つまり、笑いは脳を『脱抑制』させる効果があるのだ」

『笑う脳』茂木健一郎(日本)

ドイツの詩人ヘッセも、フランスの哲学者アランも、ちょっと気難しいことで有名だったドイツの哲学者ニーチェも、そして、日本の脳科学者の茂木健一郎さんも、みんなそろって笑いが素晴らしいということをそれぞれの言葉で書いています。

茂木さんの場合はこの「笑う脳」の中で、笑いのさまざまなメリットを具体的に記し、笑うことで人間が緊張やストレスや抑制された状態から解放されるのだと説いています。つらいことを笑い飛ばしたり、幸福ではない時でさえも笑顔を作ったことで幸福な気持ちになったり、幸福に生きるという大きな目的のために笑ったり、脳にいいことだからと理解して笑ったりして生きようと、この4人の専門家たちからのアドバイスです。

「高齢になったって笑うことはできる。だったら笑っていこうじゃないか」。これは本著を書いている私の呼びかけです。そのために次の項から、私が実際に75歳の人々を対象に行った「笑いの実験」を中心、笑いがアンチエイジングになるというエビデンスを紹介していきます。


出典:佐藤綾子著「介護も高齢もこわくない」