現代日本が「高齢力」を活かせない理由


高齢力ってすごいんだ、と言ったあとで恐縮ですが、今の日本はなかなか高齢者が自分の高齢力を誇り高く言えない状況が続いています。その傾向はそもそもアメリカから発生したIT社会です。何かにつけてパソコンやスマホの仕組みがわかっている人、フェイスブックやブログやメルマガがどんどん発信できる人が自分のビジネスを成功させたり、仲間をたくさん作ったりできる時代です。

 私も大学の学生たちを見ていて思うのですが、ろくすっぽ説明書を見ないで、次々とパソコンの新しいソフトを使いこなしています。彼らはITの申し子のようにして生まれてきているので、説明書などなくてもPCやSNSの利用は上手にできるわけです。

 高齢者はそんな時代に育ってこなかったので、なかなかここが難しい。そこで、若い人々に「これはどうやってやるの?」と聞いたりするわけです。若者からすれば、自分たちだけで高スピードに進めていきたい作業を、高齢者が横から、そこがわからない、あそこを教えろと言うわけですから、つい教える人、教わる人の立場がこの世への先着順とは逆さまになります。

 でも、もしもそうであっても、高齢者にはこれとは別に若者に教えられることがあるのですから、「これでチャラだよ」と考え直して胸を張りましょう。卑屈にならなくても大丈夫です。実は私もそうやって胸を張っています。

 同じ分野の能力で競争しようと思わないで、若者の力を上手に借りながら、高齢者は高齢者だけが持てる能力を誇り高く使っていきましょう。


出典:佐藤綾子著 介護も高齢もこわくない