(熊本県・R.K/女性)
]]>(大阪府・M.F/70代・男性)
]]>茜さんが小学5年生になったある日、「お父さんとはお風呂に入らない。」と言い出しました。そして次第に父親を避けるようになっていきました。
高校生になると、山本さんが帰宅する車の音がするだけで、自分の部屋にこもってしまい、家の中で顔を合わせるのをさけるようになりました。「お父さんから離れたい。」と言い出し、遠く離れた東京の大学へいき、そのまま就職して戻ってこなくなりました。
寂しくなった山本さんは、茜さんに毎日のようにハガキを書き始めました。「お前のことをいつも思っているよ。」と伝えたくて・・・でも一度も返事はきませんでした。
東京に行って1年目の冬、奥さんと一緒に初めて茜さんの元を訪ねました。
「バイトがあるから。」夜の8時に渋谷駅のハチ公前で待っていてと言われ「なぜ、夜まで待たないといけないんだ。」と聞き返しましたが、「バイト休めないから。」という返事です。
渋谷駅は週末を楽しむ人たちでごった返していました、ハチ公の前で目の前を過ぎ去っていく若い男女を見ながら、山本さん夫婦は「お付き合いしている男性でも紹介されるのでは。」と心配になってきました。
そこへ茜さんがやってきました。「8時までまって。」と言います、「いったい誰が来るのだろう・・・」とますます不安になってきました。
8時になったとき、茜さんが「ほらっ見て!」と正面のビルの大きな電光掲示板を指さしました。そこには「お父さん、お母さん、迷惑かけてごめんなさい。」という文字が映し出されていました。山本さん夫婦は涙で何も見えなくなってしまいました。
茜さんの方を振り返ると「今までごめんなさい、お父さん、お父さんが毎週送ってくれるハガキ、寂しい時・つらい時、いつも眺めていたの。このハガキに励まされて1年頑張ってこれたんだ。本当にありがとう。」と日付順にファイリングされたハガキが握り占められていました。
茜さんはお父さんの気持ちをしっかり受け止めていました。ただ、面と向かってそれを言うことができませんでした。メールやツイッターなどのSNSで簡単に他人と繋がれる今ですが、お父さんからのハガキは茜さんにとって特別だったのでしょう。
山本さんは今でもハガキを送り続けています。ときどき茜さんはメールでコメントを送ってくれるようになり「たまに帰ってくるとハガキのファイルを見せてくれるんですよ。」と笑顔にあふれています。
父と娘の関係性については、子どもの頃父親からの身体的接触が多い女性ほど、大人になってからの自己肯定感が高い傾向があり、積極的に社会に向かい、攻撃性も低い傾向にあると言います。山本さんは思春期の娘との関係を遮断せずに、ゆるいハガキで繋いでいたことが新たな関係性を結べたのではないでしょうか。
出典:志賀内泰弘 著「ようこそ感動指定席へ!」
]]>2年前のある日、家族で食事に行った帰りのことです。 夕食をすませ、自宅まで歩いて帰る途中、信号のある交差点にさしかかりました。 交差点の歩行者信号は「赤」でしたので、信号が変わるのを待っていたのですが、 道幅も狭く、車もまったく通らなかったので、渡ろうと思えば、簡単に渡れます。 私の家族も、信号が「青」に変わるのを待ってから渡ったのですが、そのとき、私の横にいた高校2年の長女が、こう言いました。
「やっぱりお父さんは信号が変わるまで渡らへんかったなぁ。私の思ったとおり」
「どういうこと?」
「お父さんは、人が見てても見てなくてもルールは守ると思ったから。この前も偶然見かけたとき、今と同じように待ってた。 多分、信号に限らず、何事もルールは守ってるんやと思う。そんなお父さんは、私の目標やねん」
単身赴任で、週末に帰っても、娘との会話は小言がほとんどで、そんなことを考えていたとはまったく思いませんでしたので、本当に驚きました。 確かに、管理職として所員の模範となる行動をしなければと意識はしていましたが、 思わぬところで、しかも娘に認めてもらったこの「一言」が、恥ずかしくも大変うれ しかったし、がぜんやる気が出たのを覚えています。
「親の背中を見て子は育つ」といいますが、この出来事から、常に意識して行動する ようにしています。また、率先垂範の意味についても改めて思い知らされました。
現在も、娘との関係は良好です。ただ、目標にはしてもらったようですが、理想の男性とまでは、いかないようです……。頑張らねば。
この作文を拝読し、強く思うことがありました。 なぜなら私自身が、ちょうどそのとき、「赤信号では渡らない」という訓練をしている 真っ最中だからでした。 「赤信号では渡らない」 これだけ聞くと、一見当たり前のことのように思えます。 これが、なかなかできません。
「このくらいなら大丈夫」 「こういうケースなら渡ってもオーケー」 と、赤信号で渡っているうちに、基準がどんどんゆるくなってしまう。 「このくらいならいいだろう」という考え方を、ほかの場面にも広げてしまうかもしれな い。 その心のネジのゆるみ具合が、仕事のミスや、暮らしのトラブルにつながるのではないか、と思ったのです。
交差点で、信号を待つあいだ、「バカじゃないの」と自分でも思うことがありました。 でもなかには、一緒に並んでじっと信号が青になるのを待っている人たちもいます。 ちょうどそんなときだったのです。例外を一つ認めてしまうと当たり前になってしまいます。この作文を読んだのは……。 「正直者は、けっしてバカを見ない」のだとホッと救われた気持ちになりました。
出典:志賀内泰弘 著「眠る前5分で読める心がほっとするいい話」
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