感謝の気持ち
十五歳で心臓を悪くし、散歩中パタリと倒れて動けなくなってしまったヨタロー。老犬だが、それまでは、元気に歩いていた。突然、寝たきりになり、介護状態になってしまった。
歯が一本もなくなってしまった口で、湯で柔らかくしたドッグフードを口元に運ぶと、一口一口食べてくれた。ペットシートの上に寝かせていたので、トイレはいつも通りの処分。
体をお湯で絞った温かいタオルで拭いた。寒がりだったので、古くなった洋服を布団代わりにかけてあげた。全く吠えないが時々小さく『クゥーン。』と泣いた。眠る時も与太郎の寝ている段ボールのベッドごと、私の寝室へ運んだ。寂しくないように、だ。
一月の寒い日の朝、ヨタローは服の袖に顔を突っ込んだまま、死んでいた。
ガリガリに痩せ細り、馬のように茶色く、つやつやだった毛は白髪だらけになってしまった。
私と母とでヨタローの介護をし、一日でも長く生きて欲しかった。ただ息をして寝ているだけでもよかった。ヨタローは亡くなっても、ただ眠っているだけに見えて、母といっぱい泣いた。
ダンボールにヨタローの好きだったおもちゃやお花を入れて、火葬してもらった。
小さくなったヨタローお墓に埋めた。骨になったヨタローを生前、父が一番可愛がっていたので、一緒に埋めた。
天国で父に遊んでもらっているといいな。時々、寝返りをさせてあげたり、うんちで汚れた体を拭いたり…。
介護は、今までいっぱい私と母を癒してきてくれた。ヨタローへの感謝の気持ちでしていた。ヨタローは、私たちの家族だった。
(愛知県・S.Y/女性)