最期の親孝行


今から26年前の4月に父が他界しました。その年は祖母が2月に、つまり父の母親が亡くなりました。父は肺がんの末期でした。どうにか車椅子に座れるような状態でしたが、口には出さなくても逆縁だけは子として避けたかったようで、葬儀の会葬御礼もでき、最後の親孝行をしたのです。父の職業は真面目な銀行員、その延長線上なのか、病院の痛み止めの点滴をしていた時、多分幻覚でも見るのか、点滴をそろばんだと言ったり、「合計は合っているのかい?」などうわごとを言ったりと、年代的に仕事人間でした。子供としては放任されて育ったように感じ、そんな良いイメージではありませんでしたが、付き添ってみて、誠実に仕事を向き合ってきた親だとわかりました。私は父が亡くなった年と同じ66歳。年相応に検診では悪い数字が少々出ますが、まずまず健康です。父は最後まで生きることに執着していましたので、病名は最後まで伏せておきました。告知する事は本人にとって過酷であると、親子である故によくわかっていました。多分本人は承知していたと思っていますが、言葉にして伝えなくて良かったと思っています。私にとって最後の親孝行でした。せめて私より一回りは長生きして家族のために生きたいものです。

 


(福島県・<M.S/女性)