月毎家族誕生会


外食などせずに慎ましく生活してきた。
が、誕生祝いだけは必ず行った。
誕生日に関係なく、その月に誕生したが者がいれば行う月毎誕生会である。
子供三人に孫三人と夫婦の計八名なので毎月のように行われる。
家族全員が鮨を好きなので値段が安い出前専用鮨から握り鮨と偏食で納豆しか食べなかった孫娘の長女用に納豆巻きやネギトロなどの巻鮨を加え一人前よりも多い量である。
妻は義母譲りの茶碗蒸しを作った。
大小不揃いの器で同じ時間で出来る限り多く作った。
食べ盛りの子供たちが三人いたので、すぐに無くなった。
具は定番の鶏肉や蒲鉾に銀杏など季節の物が入った。
ほかには義母譲りはポテトサラダであった。
酢で〆たタマネギの感触が良かった。
リンゴが入るのも独特だろう。
六月に娘が嫁に行く。
長男の提案で食事会を計画した。
外食などせずに慎ましく生活してきたので最初で最後の晩餐でもある。
公務員で生活が安定している長男は代金を出してくれた。
脳卒中のリハビリ中で無職の私は「感謝状」を渡した。
真四角の葉書大の一筆箋の表に
「感謝状、坂本麻由
殿貴女は坂本家の長女として誕生した時から持ち前の明るさと負けず嫌いの努力で家庭を明るくしてくれました。
今、嫁ぐに当り、その貢献を表し、ここに感謝状を差し上げます。
平成十六五月吉日家族代表・父
長女が彼の家に挨拶に
行くと、パン製造、販売業の創業者の祖父さんが祖母さんに向い
「婆さん、紙とペン」と言って百万円と書いたこれで好きなところに行ってきなさい。但し、帰ったら家を継ぎなさい、と念を押された。
彼は一度パン屋に入社したが、社長の父親と諍いを起こしデザイン会社に入社した。
主賓が部長だったので、祖父さんに判った。
六月長女が嫁に行く。
娘は難産の末、男子を出産した。そして、長女は安産であったが、末子の次女は切迫流産のため、入院して出産した。
婿殿は一度、パン屋に入社したが、社長の父親と諍いを起こし、日大芸術学部グラフィックで習ったデザイン力を生かし、デザイン会社に転職した。
その後、その会社も辞め、自分で会社アメージングデザインを興した。
祖父さんの創業者精神があったのであろう。
今は好きな車でポルシェやベンツに乗り
減価償却で落としているようである。
娘は長女に妃の文字を入れ、自分のように妃に成長することを祈っている。


(東京都・S.S/60代・男性)