人生において成功を収めたら、人は幸福になれるのでしょうか。

この場合の成功とは、学問や事業などで大きな成果を上げて、地位や名誉を得たり、財産を築いたりすることであると考えてください。実はこうした成功は、必ずしも幸福に結びつくとは限りません。むしろ大きな不幸を呼んでしまうこともあります。

ここに事業で大成功を収め、たいへんな財産を築いた夫婦がいたとします。夫婦で協力して成功を目指している過程においては、お互いに充実感を味わったことでしょう。ところが財産ができたことで、夫婦の生活は一変します。妻は欲しいがままに高価な衣服や貴金属を買い求め、ぜいたくな生活に興じるようになりました。夫は夫で、毎晩のように夜の町に繰り出して酒色にふけり、夫婦関係は悪化していったのです。

このように、いわゆる成功を収めた夫婦が不幸に陥るケースは、世間では珍しいことではありません。つまり、成功と幸福とはイコールで結ばれないということです。

それでは、成功した人は必ず不幸になるのでしょうか。そんなことはありません。地位や名誉を得るほどに、自分の心に磨きをかければよいのです。そして、築いた財産を世のため人のために還元していくことで、大きな幸福感を味わえるようになります。

出典：「三方よし」の人間学-廣池千九郎の教え１０５選